●遺言の効力について
遺言は、売買、賃貸借と同様、法律上の権利義務の
発生をもたらす行為です。また、遺言は、遺言者の一方
的な意思で完結し、かつ、遺言内容は遺言者の死後、書
かれた文言に従って実現されます。その為、遺言が有効
になる為の要件は厳格であり、これに反した場合は
無効となります。
●遺言が無効になる場合とは
まず、遺言能力(満15歳以上)のない者や認知症等で
意思無能力になっている者の遺言は無効になります。
次に、売買などの取引と公序良俗に反する内容の遺言や
錯誤に基づく遺言は無効となります。また、二人以上の
者が同じ書面に遺言を書く、共同遺言も無効です。
●自筆証書遺言の場合
特に簡易でポピュラーな自筆証書遺言には、種々の要件が
あり、それに反した場合にも無効となります。自筆証書
遺言は、全文、日付及び氏名を自ら手書きして、これに
捺印することで成立します。
ですから、他の者に代筆させたり、一部を加筆させたり
あるいは、タイプライター、ワープロ等も無効になります。自筆証
書遺言に関する紛争では、誰かに偽造された、筆跡が違う
等としてその有効性が争われる例が多いです。
次に、日付も、年月だけでなく日まで書かなければなり
ませんが、遺言者自身の印であることが必要です。
このように、自筆証書遺言は、入るに易いものの、思わ
ぬところで無効になり、また、後日のトラブルを招きがちです
●公正証書遺言の場合
これに対し、公正証書遺言(公証役場にて、二人以上の証人
が立会い、遺言者が公証人に遺言内容を口述し、その正確性
を確認した後、遺言者及び証人が各自署名捺印し、公証人が
方式の適式性を付記して署名捺印するという遺言)では、自
筆証書遺言におけるリスクの大半は除去できます。ただ、自力
で進めるにはなかなか敷居が高いところがあります。
●生涯最後の一大事業だから
遺言を書く以上、何の支障もなく内容を実現させて欲しい
もの。内容の検討もさることながら、遺言の正しいやり方、
手続きについても十分にご注意いただきたいものです。