● 私が小学生の頃は、今よりいろいろなことに余裕があったように思います。
春に、秋に、と様々な草花の種を撒き、綺麗な花が咲き、時には食べられる実
がなるのが楽しみでした。そんな頃に、「桃、栗3年、柿8年!」と早口言葉
のようなフレーズを聞いて、少々びっくり。数週間から長くても数ヶ月で花や
実のなる小さめの植物とは違って、実のなる木はまともな収穫までに何年もの
時間がかかるということ。柿などは、それまでの自分の一生分くらいの時間が
あって、やっと実がなるのかと子供ながらに何だか感慨深く感じていました。
● それが最近は、世の中全体が、何でもスピード化。インスタントの食材は
当たり前、レンジで「チンする」もしっかり広辞苑に載ったとか。アフリカ
や中南米にいる人とも、コンピューターがあればメールのやりとりは一瞬です。
確かに便利になりましたし、生活はうんと楽になっているようです。
● しかし、スピード化の感覚だけでは通用しないものもあるはずです。また、
政治の世界でも、どうも民主党政権になって以来、高速道路の無料化や郵政の
ことなど、民営化して健全な経営を目指す方向とは逆のことが行われています。
どういう方向性がよいか、という問題よりも、一つの形が出来上がる前に
コロコロと方向転換したのでは、良い結果など出る由もなし、という感じです。
● 種を撒き、苗木を植えたまでは良かったとしても、すぐに実ができないからと
いってほじくり返し、引き抜いていたのでは何の収穫もありません。じっくり腰
を据えて、少なくとも何年かの時間をかけなければ目に見える成果が現れてこな
いものが、実際には沢山あります。特に、社会の大切なもの、人生にとって重要
なものになればなるほど、予想以上に時間がかかるものなどです。
● 今この場で決着をつけなければならないこともあるでしょう。しかし、それば
かりではなく、少々の波風には動じずコツコツとした前進をはかるべきものも
あります。特に、世の中全体が物凄い変化や転進を続けている昨今の状況です
から、真剣に腰を据えて取り組むべき事柄を見抜く力が求められます。何でも
かんでも時代の流れに乗るだけでは、どこかでしっぺ返しを受けかねません。
家族との関係や仕事のやり方、自分自身の夢への挑戦・・・。大切なものに
しっかりとあなたの思いを注いでください。時間をかけてください。
本気で努力してください。そうしてこそ、本物の実がなります。